サッカーは本当に展開が早いと思う。
さっきまであっちに攻めてたのに、今はもうこっちで攻めてて、ボールの奪い合いをしてる。
知識があまりない私は、見るたびにきょろきょろして驚きっぱなしだ。
(……あ)
相手が、ボールを奪った。それも、ゴールの前で。
………蹴られる。
ハッと息を飲んでしまった。
ご、ゴールが決められる…!
ぎゅ、と思わず手を握った時だった。
「打たすなぁぁ!」
でっかい声が、フィールドに響いた。
思わずビクッと身体が跳ねる。周りもびっくりしたようにハッとしていた。
び、びっくりした…!よくここまで響くなその声。本人にあんまり自覚ないと思うけど。
それと同時に、思わず笑みが溢れた。私のよく知るその声には、安心感があるから。
絶対に…なにか、やってくれるって。
「奪った!」
周りから歓声が上がる。
味方がボールを奪ってドリブル、パスと続けた。
きっと彼の声に鼓舞されたんだろう。
さっきまで防戦一方だったのに、今は味方が前へ前へとパスしてる。
1人、2人、3人。どんどんと敵を抜いていき、ついに…
「へいパァース!」
「いけ、狼谷!」
声と共に彼へと、ボールが飛んでいく。それをしっかりと受け取って…。

