ストレートすぎる幼馴染に翻弄されてます

「……なんでもない」

「?そう」

なんか変なこと言ったかな?あれ明らかに拗ねちゃってるんだけど。

……ううーん、わかんない。
昔っからいまいち翔ちゃんの地雷というかがわかんなからなあ〜。

そんなことを考えながら、食器を片付けようと立ち上がった。そして、歩き出した瞬間。

「っ!?」

足がもつれて、転びそうになってしまった。
あっと思った時にはもうすでに床に倒れ込みそうで。

やばっ、これは立て直せないっ…!

痛みを覚悟して、目を閉じた時だった。



ーぐいっ!



「っぶねえ…」

聞き慣れた声が、耳に響く。

間一髪、翔ちゃんが私の腕を引いて、抱き抱えてくれたおかげで、倒れ込まずに済んだ。

すぐにお礼を言おうと思ったけど、なぜだか声が出ない。

ぎゅ、と後ろからのびて力強く私を抱きしめているのは翔ちゃんなのに、いつものハグとは違うからか、どうも落ち着かない気がしてならない。

ドキ、ドキ。
翔ちゃんに気づかれるんじゃ無いかっていうぐらいうるさい、心臓。

なんでそんなにうるさいのかな、私の心臓…!
お、お願いだから止まって…!


「ご、ごめんね翔ちゃん。ありがとう」


なるべく平常心を心がけてお礼を言う。
ちょっと震えちゃったけど、気づかれない程度なはず。
なんとかいつも通りっぽく言えたんじゃ無いかな…!?


そう、思ったのに。


「ほんと、勘弁して…。俺、お前になんかあったら生きていけない」

はあっという吐息と一緒に、低く掠れた、切ない声。
耳元でつぶやくように、私を抱きしめたまま翔ちゃんは言った。

それに加えて、さらにぎゅうっと抱きしめてくる。
どく、どく、どく、どく。

「ごめん、ごめんね」

「ん、もっと撫でて…」

私の首元に顔を埋める翔ちゃんは、きっとわからないんだろう。私の顔が人生最高レベルで真っ赤なことに。


だから……だから、本当に困るので。
そんな声で、誤解を生むような言い方で言うの、本当にやめてください!!


すりすりと頭をすり寄せてくる幼馴染に、私はよしよし、と頭を撫で続けるのと同時に、心の中で、絶叫しまくっていたのだった。