「いや気にするよ! それに、私逃げ足早いから大丈夫!」

「……襲われても俺は知れへんで。」

 クロックスをつっかけ、玄関扉の鍵を開けて一緒に外に出る。

 夜はやっぱり冷え込んでいて、カーディガンでも羽織ってよかったなと後悔した。

 夜空にぽつりを浮かぶ三日月は綺麗な光を放ち、こちらを見ている。

 なんだかセンチメンタルな気分になりそうだ。

「来歌君のお家ってどこらへんなの?」

 そういえば聞いていなかったなと思いつつ、突拍子もなく聞いてみる。

 だけど、返ってきたのはぶっきらぼうな言葉とふてぶてしい態度で。

「んなの、言うわけないやろ。」

「じゃあどうやって帰るの? 私がついていったらどっちにしろ分かるし。」

「そこの公園に兄貴が待ってるらしいねん。……ほんまうざいわぁ。」

「そんな事言っちゃダメだよー。」

 でもお兄さんいたんだ、てっきり一人っ子かと思ってた。

 どんな人なんだろう、待っててくれてるって事はきっと優しい人なんだろうな……。

 一人であれこれと考え、クスッと頬が綻ぶ。

 来夏君はそんな私を、ものすごーく怪訝な表情で見ていたけれど。