「あはは、夜優は弱み握れるほど器用じゃないよ~。多分、夜優の人の良さ故、かなぁ。」

「え、やっぱそう思うよね。」

 ……扉、開けなきゃ良かったかな。

 ちょっと遠くにいたらしいクラスメイトの声が聞こえてしまい、一旦閉める。

 明暮君に申し訳ない事、しちゃった。

 きっと聞きたくなかった事だろうに聞かせてしまって、罪悪感に苛まれる。

「明暮君――」

「……俺には関わらんほうがええ、碌な事にならんから。」

 私の代わりに扉の取っ手に手をかけた明暮君の横顔が視界に入った。

 もしかしたら、明暮君は気にしてないかもしれない。声色が『どーでもいい』って言ってるように聞こえる。

 けど、明暮君と関わらないって決めちゃうのは……絶対違う。

「私は、明暮君のこと冷たいなんて思ってないよ! 今日だって挨拶返してくれたし、手伝ってくれたし! みんなが思ってる明暮君は私には全然分かんないけど、私が保証する。明暮君はめーっちゃ良い人だって!」

「……根拠は?」

「ないよ! 多分、明暮君は多分人と関わるのが苦手なだけ。だって関わっちゃえば、すっごく優しい人だってすぐに分かるから。」