「……夜優、起きてるか?」

「うん……起きてるよ。」

「体の調子はどうや? 痛いとことか変に感じるとこはあらへん?」

「……もう大丈夫みたい。ごめんね、また迷惑かけちゃって。」

 日が落ちて夜になった、午後8時。窓の外はすっかり暗く染まっていて、ビルやネオン街の光だけが辛うじて分かるほど。

 あのまま聖来君のお家に来た私は、日明財閥専属の女医さんに解毒薬を処方してもらった。注射みたいな感じの薬で、副作用だったのかすぐに眠りに落ちてしまった事は覚えている。

 そして、まだ見慣れない聖来君のお部屋のベッドで眠りから覚めた時に、聖来君が様子を見に来てくれた。

「迷惑なんて考えんなや。……夜優が無事でいてくれたら、それだけでええんやから。」

 ベッド脇まで歩いてきた聖来君に、衝動的なハグをされる。

 思いの外力が強くて、でもその腕は震えていて。いかに自分が聖来君を不安にさせたかを痛感した。

「助けてくれて、ありがとう……っ。聖来君は本当に、私のヒーローだよ……。」

「そんな大層なもんか? せやけど、手遅れになる前で良かったわ。薬の効果もそうやけど……あいつに、好きなようにされんくって。」