その辺りの理由があるはずだから、今まで何の情報もなかったんだと勝手に考えている。

 だから正体を知ってしまった私は……日明財閥に始末される、という結論に至ってしまうのが道理だろう。

 ひぇ……し、死にたくない……。

 まだまだやり残した事いっぱいあるし、高校生ライフ満喫したいし。

 というか死ぬ準備も心構えもできてないし、ちょっと待ってとしか言いようが……。

「夜優?」

「……あの、私帰ります。」

「どうして?」

「ええっと……な、なんとなく?」

 一歩二歩と、後ずさりしていく。

 このお屋敷に入ったら二度と元の生活には戻れないような気がして、未知の恐ろしさを抱いた。

 ……今帰れば、命は助かるかもしれない。

 私は聖来君が日明財閥の人間だという事以外知らないし、口外するつもりはない。

 その誠意を見せつつも逃げれば、見逃してくれる……かもと思いついたのだ。

「そ、それじゃあねっ……せいらく――んわっ!?」

「だーれが、勝手に逃げていいって言ったん?」

 ひ、ひぇ……っ。