私の住む春暁街(しゅんぎょうがい)は、大きな権力に支配されている。

 その権力を持つのは日明(ひあけ)の人たちだと言われていて、顔も名前も詳しい事も知らないのに、春暁街に住む私たちは日明の人たちを崇め尊敬し讃えていた。

 いつからそうなりだしたのかは分からない。おじいちゃんおばあちゃんの時代には既にそうだったらしいから、随分長く崇められているんだなぁ……と思わずにはいられない。

 日明の人たちは何においても優秀で、様になり、まさに崇められる為に存在しているような人たちらしい。

 噂では、アブナイ裏の世界にも足を踏み入れているん……だとか。

 でもその日明の人たちのおかげで、私たちはインフラが綺麗に整い、治安も程よく、実に平穏に暮らせている。

 度々日明の人たちを狙って怖い人が来る事もあるんだけど、私たちがそれを知るのは何もかもが終わった後で。

 ……誰も日明の人たちの素性を知らないらしい。

 どこに住んでいて、何をしていて、どんな人たちなのか。

 名前も知らない真っ赤っ赤すぎる他人を、街を守ってくれているとはいえ、どう崇めればいいのか正直私は分かっていなかった。