家具は、このベッドを除いたら、リビングに置くようなローテーブルとソファーがあるだけ。それだけしかない。
住まいというより、収容所かなにかに思えた。
「凛桜は入ったことなかったね。ここは、檻かな」
「……え?」
「言うことの聞かない罪人を懲らしめる場所」
ぞくり、と。背筋に冷たいものが走った。
そんなわたしを見て、男がうれしそうに笑う。
「ジョーダン。ただの部屋だよ。客用の」
冗談に聞こえない冗談はやめてほしい。
人体実験用の閉鎖病棟、と言われてもわたしは信じたと思う。そのくらい異様な部屋に映ったのだから。
……それよりも。
今、この男は、わたしを〝凛桜〟と呼んだ。
――どうしてわたしの名前を知っているの?