日曜の朝。
いつもより遅く起きた航は、近所のカフェでブランチでもしようと、スマートフォンだけをポケットに入れて部屋を出た。

マンションから少し歩いた大通りまで来ると、少し先に止まった車から木原が降りてくるのが見えた。

(え?人違いか?)

そう思ってよく見てみたが、やはり木原だった。

(なんであいつがここに?)

近づいて声をかけようとした航は、車の横の建物から誰かが出て来るのが見えて、動きを止める。

タタッとエントランスから出て木原に駆け寄ったのは、間違いなく凛だった。

(そうか、ここって彼女のマンスリーマンションだったな。って、ええ?!どうして二人が?)

咄嗟に木の陰に隠れて様子を見守る。

おはよう!と挨拶した後、木原は助手席のドアを開けた。

デニムジャケットにベージュのスカート姿の凛は、ふわっと裾を揺らしながら車に乗り込む。

木原はそっとドアを閉めると運転席に回り、やがて車はゆっくりと動き出した。

航は呆然としながら、小さくなる車を見送っていた。