落ち着かなかったあの慌ただしい日々から一変、私はまたバイトに明け暮れる日々。

大事に使っていたあのお金も、所詮私のバイトの稼ぎだけでは生活費は賄えず、少しずつ使わさせて貰っては節約する毎日。

新しいバイト先の飲食店で、ほとんど洗い物ばかりしていて手が荒れる。

痛い、痛い、

だけど時折思い出す黒川君の姿を思い出しては、胸の方がズキンと痛い。




どうしてこんなに忘れられないの?




ひび割れて、あちこち血が出でる指を押さえて考える。
全身に押し寄せる感情が恋なんて、皆はこんなに辛い想いを抱えて生きているの?

こんなに毎日会いたくてたまらない感情を胸に抱えて、過ごしているの?


私、この感情がいつか消えるなら、もう二度と恋なんてしたくない。

したくないよ…。

人を好きになってこんなに苦しい想いをするなら、私は二度と…。



黒川君を好きにならない…。






「幸子!!これ見て!!!」

同じ飲食店で働く加南子がバイト中にも関わらず、携帯を持って走ってくる。

「加南子…ヤバいよ。仕事ちゅ…」
「いいから見てって!!!」

飲食店の厨房で、周りもなんだなんだ?と人が集まってくる。

「いい?押すよ!?」
「……?」

見せられた携帯の画面には







久しぶりの黒川君が映っていた。







染めていた髪の毛は黒髪になっており、何処かの部屋で私達の学校の制服を着て一人で座っている。


加南子が再生のボタンを押すと、黒川君の話す姿が始まった。



「えーと…。皆さんお久しぶりです。瑠色です。」


久しぶりに聞く黒川君の声に、荒れた手で口を押さえる。