脱いだ制服をアパートの外にある陽の当たらない、茂みを覆った物置小屋に教科書と一緒に隠す。鍵を持っているのは私だけで開けられる事もないが、ここまで徹底しないと酔ったお父さんに捨てられてしまう。

そこで急いで制服のお下がりをくれた、またしても近所のお姉さんのお下がりに着替えて玄関のドアを開けた瞬間のお父さんのコップのお出迎え。

ドアの傷は数え切れない。


「てめぇ俺が働いてないの馬鹿にしてんだろ?あ?」



ボゴッ!!
ボロボロになった椅子が蹴られて、一瞬宙を舞う。そろそろこの椅子の限界が来そうな壊れた姿になろうともそれでもなんとも思わない。

長年経験したお父さんの酔い具合がわかり、レベル1からレベル3までの3段階。1なら酔っていても笑顔でおかえりと言ってくれる。
しかし時々くるレベル3以上の酔い具合。

大体その時は行政の人が訪問する日で、何かあった時の為に常備している2千円が入ってる封筒を見つけて、お酒を買っては飲み過ぎてしまう。

感情論だけでは通じない、市の職員さんとの話を受け取る気持ちの余裕がお父さんにはないので、こうやって心の規制のコントロールが出来ずに普段以上に荒れてこうなってしまう。

そうなると、たまらなく怖いお父さんの姿。

こんな時は、この場から離れるしか方法は知らない。

そっと右手を後ろに回し、玄関のドアのぶの位置を確認してサンダルのままドアを開けて走る。