「もう大丈夫なの?」
エントランスを出て、学校に向かいながら天海くんがそう聞いてくる。
本当は、彼を置いて早歩きで先に行ってしまいたいけど、助けてもらった手前、今までのような態度がしにくい。
「はい。もう熱も完全に下がったので」
「良かった。てか、妹ちゃん、ちゃんと渡してくれたんだね」
「はい。メッセージ付きで部屋に置いてくれてました」
「へぇー、協力しないって言ってたのに……いい子だね」
「協力?」
「ううん。なんでもない」
となぜか満足そうな顔を見せる天海くん。
“顔整い”
奏が天海くんのことをそう言っていたのは黙っておこう。調子に乗りそうだから。
「てか、妹ちゃん中学生だよね?学校休みだったの?」
「……」
奏のことを聞かれて、ドキッとする。
「最近、制服着てるところ見てないし、学校行けてない感じ?」
「天海くんに関係ないですよね?なんでそんなに人のことにズカズカと踏み込んでくるんですか……」
「それは西木さんも同じでしょ」
「はい?」
思わず顔を上げて、睨みつける。
「間違ったことをしてると思ったら、自分にカンケーない人にでも、誰にでもズカズカと立ち向かっていく」
「俺たち、似たもの同士だね」と爽やかスマイルを向けてくるのに腹が立ってすぐに視線を前に向ける。
そうだった。
私はこの人のことが大嫌いだったんだ。
熱にうなされて、ちょっと親切にしてもらったからって忘れてた。
そもそも風邪をひたのは、天海くんが私の傘に入ってしたのが原因なのに。
「それでは、お先に」
ゆったりのんびり歩く彼にそう告げて、私はスタスタと早歩きで学校まで向かう。
「え、ちょ、月雨ちゃん?」
背後からそんな声が聞こえたけど無視だ。
今度こそ、もう彼には関わらないんだから。



