となりの色気がうっとうしい


早退した日から2日後。

私はマンションのエントランスに立っていた。

スマホの画面を見る。
いつもはとっくに家を出ている時間。

……だけど。

「……」

視線をエレベーターへ向ける。

もちろん、彼が出てくるとは限らない。

遅刻も多いし、休むこともしょっちゅう。
真面目とは言い難い人だ。

でも……流石にあそこまでしてもらってお礼のひとつも言わないのは、私のポリシーに反する。

5分。
あと、5分だけ待って、来なかったら行こう。

そう決めて壁際に立ち、思い出すのは2日前のこと。

熱でぼんやりしていた頭。
天海くんに身体を支えられてここを歩いたのをうっすら覚えている。

身体が鉛みたいに重くて、一緒にエレベーターに乗って。

そこからの記憶がなく、気付けば自分のベッドの上に寝かされていた。

そして、目を覚まして起き上がって、視線に入ってきたのは、ベッド横に置かれたスポーツドリンクとゼリー。

スポーツドリンクには付箋が貼られていた。
見慣れた妹の字で書かれたメッセージ。

『お姉ちゃんのクラスの顔整いがお見舞い持ってきてたよ』

顔整い。
脳裏に浮かんだのは、ひとりしかいない。

天海双葉……どうして私に構うんだろうか。

そう考えていると、エレベーターの到着を知らせる電子音が鳴った。