となりの色気がうっとうしい


『あの、そこに溜まっていると迷惑なんですが』

あれは、まだ高校生になって1ヶ月ほどしか経っていなかった頃の昼休み。

外の渡り廊下の一角でいつメンと座って談笑していると、そんな高圧的な声が頭上から降ってきた。

『は?』

顔を上げると、長い髪を一つにポニーテールに縛った女子生徒がひとり立っていた。

マンションで、よく見かけていた女の子。
俺の隣に住む子だった。

彼女は、俺がお隣さんだと言うことにまったく気付いてなさそうだったけど。

『聞こえてませんか?邪魔です』

“邪魔”だなんて、女の子から生まれて初めて言われた衝撃。忘れられるわけがない。

『あぁ、ごめん。すぐどくね』

そう答えると、スッと顔をそらして俺らの横をスタスタと歩いて行った彼女。

その背中を見つめていたら、風が吹いて、彼女の細いポニーテールの毛先が揺れた。

その姿から、目が離せなかった。

マンションのエントランスで、何回か、母親か妹らしき子と歩いているのを見かけたことがあったけど、あんな顔、するんだな。

周りに流されない、芯のある子だ、と思った。
俺とは大違い。