「お兄様、これは……」
触れた布地はさらさらとしていて光沢がある。それなのにびっくりするほど軽くて、レインは驚きに目を見張った。濃い群青の、朝が来る直前の空の色――ユリウスの髪の色をした生地は、信じられないほどになめらかだ。布に詳しくないレインにも、これがずば抜けて高価だということがわかった。
「これは東方の国にある民族衣装の生地ですわ、レイン様」
ルルはユリウスの手から生地を受け取って微笑んだ。
「さすが、公爵閣下ですわ。レイン様にこんなにもお似合いになるものを見つけてしまわれるなんて」
「レインのことだからね」
ユリウスが満足げに笑う。ルルが「そうでしょうとも」と頷いた。



