お針子達と話しながら、ルルはレインに布を合わせていく。しかし、なかなか納得のいくものがないらしい。
「これもきれいだと思うのですが……」
「だめですわ。レイン様。卒業パーティーは人生の一大事なのだから、妥協してはなりません」
「は、はい」
食い気味に言われてレインは押し黙った。もうしばらくはこれが続くらしい。
ふいに、ルルがユリウスを振り返った。
「公爵閣下はどの生地がレイン様に似合うと思われますか?」
水を向けられ、ユリウスは椅子に座ったままゆっくりと目を瞬いた。
「そうだな……」
ユリウスは立ち上がり、部屋を歩いていくつか生地を拾い上げ、レインの体に当てた。
しゅるり、しゅる、と衣擦れの音がする。ユリウスの選んだ生地は濃い青が多かった。
一枚ずつ当てていくのを、お針子達とルルが真剣に見ている。そしてユリウスが最後にレインに当てた布に、ルルはおや、と片眉をあげ、お針子達からは感嘆の声が上がった。ユリウスも、この布以外をレインの体から外した。



