元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される


「あ、ありがとうございます……?」

「あらあら! レイン様が照れていらっしゃる! また私、デザインを思いつきましたわ。……それで、公爵閣下、本日はどのような用向きのドレスを仕立てさせてくださるのでしょうか?」
「今度行われる卒業式後のパーティー用のをまず一着。それから……」

 ユリウスが注文している間に、レインは店の中を見回した。
 お針子たちがせっせと手を動かしている。その手の動きは速く、と同時に繊細だった。

 時折こちらを向く視線がいくつもあるから、きっと作業の合間にレインを見ているのだろう。髪をだらしなくたらし、顔を隠していることが急に恥ずかしくなって、レインは前髪をそっと横に流した。その瞬間、部屋のいたるところでほう、とため息が聞こえた。

「見て、なんて美貌かしら」
「アンダーサン公爵閣下も相当綺麗な顔をしているけれど、ご令嬢はそれ以上ね」
「透き通る、というのかしら。儚い中にも芯があって……綺麗ねえ」
「ちょっといい匂いしない?」
「ちょっと、変態みたいなこと言わないでよ。……でもたしかにいい匂いがするわ」
「眼鏡越しだけどすっごく綺麗な目をしてる。これはルル様大のお気に入り、というのもわかるわぁ」
「月に一度、ルル様が大はしゃぎで出かけていくのよね、たしかにこれは大はしゃぎするわ。私だっていろんなドレスを思いつくもの」
「あれもこれも着ていただきたい!」