元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される


「ええ、ええ、ルルばあやですよ。レイン様。いつもは公爵邸でお会いしていますものね。驚くのも無理はございませんわ」
「え、でも、あの、ここは王都の人気の……デザイナーの方が……」
「人を選ぶデザイナーがいる仕立て屋、でしょう。ええ、確かに、私はいんすぴれーしょん、の湧く相手にしかドレスは作りませんのよ」
「レイン、ルル氏は以前公爵邸に来たときに君を見初めてね。それ以来、レインのドレスは絶対に自分が作ると申し出られたんだ」
「見初めたなんて。アンダーサン公爵閣下もろまんてぃっくな物言いをされますのね」

 ルルはからころと笑った。六十を超えているはずだが、ルルの言葉ははきはきしている。レインはルルのそういうところが好きだった。ルルは少女のような目をレインに向ける。

「でも、正しいですわ。私はレイン様を前にすると、無限のいんすぴれーしょんが湧くのですから」

 お針子たちの視線がレインに集中する。レインは顔を赤くして胸の前でもじもじと手を重ねた。