「たまにはいいんだよ、レイン。気を晴らすことも大切だ。……私のわがままを、聞いてくれるかい? レイン」
「……お兄様が、望まれるのでしたら」
「なら、決定だ。学校には私が休みの連絡をしておこう。公爵の用事につき合わせるんだ、休みをとってしかるべきだから、学校も文句は言うまい」
「ま、お兄様ったら」
レインは笑った。久しぶりに、本当に笑った日だった。
■■■
空は晴れていた。暦の上では冬だが、春が近いためか少しだけあたたかい気がする。
王都は城下町。多くの高級店が軒を連ねているその場所で、ユリウスに連れられて入ったのは、専属のデザイナーが気に入った人にしかドレスを作らないということで有名な高級仕立て屋だった。



