「雨が上がると、虹が出るだろう? これが見たかったんだ」
先代女王は笑って言った。虹は王家の証なのだ、と。
こんな幸せが永遠に続くと、その時のユリウスは疑いもしなかった。
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それは、それから三年後。ユリウスが十歳になり、アンダーサン公爵に伴われて城に行ったときのことだった。
イリスレインが何者かに攫われたのだ。
手引きをしたのは城の侍女だった。当時十歳だったユリウスはイリスレインと、王配である彼女の父と過ごしていた庭園に、暴漢が入ってくるのを止めることができなかった。剣術を習って間もない少年だ。それは、他者から見れば仕方のない結果だった。
イリスレインを奪われまいと暴漢に立ち向かっていったユリウスは返り討ちにあい、瞼に深い打撲を負った。
目が開けられず、まともに動けなくなったユリウスは、けれど必死でその目を開ける。そうして、ようやっと目が明いたとき、ユリウスはユリウスをかばい、暴漢の剣に貫かれる王配を見た。



