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保健室で手を冷やしている最中も、ユリウスは無言だった。
レインが主席として入学式の挨拶をする間はじっとこちらを見てくれていたけれど、入学式を終え、帰り道になっても、ユリウスは何かを考えこんでいるようだった。
「お兄様……」
帰りの馬車で、レインはさみしさに耐えきれなくなってユリウスを呼んだ。
窓の外を見て真剣な顔をしていたユリウスがはっとこちらを向く。
「すまない、レイン。少し考えごとをしていた」
「そうだったのですね、私がお兄様に余計なことをしてしまったのかもしれないと思っていました」
「私のためを思ってだろう。レインが気にすることはないよ」
「それでも……」
「大丈夫だよ、レイン」



