腕を強くひかれ、レインはたたらを踏んだ。
どうしよう、このままついていくしかないのだろうか。レインが救いを求めるようにユリウスを振り返ろうとした、その時だった。
「失礼、殿下」
レインの視線が届くより速く、ユリウスがレインを横抱きにしたのだ。
「あ、おい!」
そのままかつかつと速い歩調で進んでいく。ついて来ようとするオリバーに、ユリウスが強い視線を向ける。それだけで、オリバーはぐっと喉を詰まらせて立ち止まった。
ユリウスはそれを確認すると、もう振り返ることはなかった。
ユリウスが話すことはない。無言だった。きっとユリウスは苛立っている。ただレインだけが、救われたことへの安堵と、兄に抱かれていることへの胸が張り裂けそうな歓喜に、ぎゅっと両手を握りしめていた。



