間一髪でユリウスがかばってくれたからレインにはぶつかっていないが、代わりにユリウスに勢いよくぶつかってしまった青年は、思いきりたたらを踏んで転んだ。一方のユリウスは鍛えているからかびくともしていない。

 さすがお兄様だわ、と思いながら、レインはよろけていった少年を見やる。
 歳は自分と同じくらいだろうか。おそらく新入生だろう。金髪に琥珀色の目をしていて、美少年と言えなくもない。ただ、この広い通路を歩いているにもかかわらずレインにぶつかろうとしてきたことと、なにより――ユリウスが隣に並ぶことがなければ。

 ユリウスの、眼鏡をしていてもわかる迫力のある美貌に比べてしまっては申し訳ないのだけれど、どうしても誰でもが見劣りしてしまうのだ。
 レインは眉尻を下げて少年を見つめた。少年の顔がぽっと赤くなる。

「あの……大丈夫ですか?」

 おそらくぶつかってきたのはわざとだ。そうでもないと、この広々した通路でぶつかる意味が分からない。それでも転んだ相手を無視するわけにもいかない。

 レインが差しのべた手をぎゅうっと掴み、レインが痛みに顔をしかめるのにも関わらず、少年は「君の名前は?」と何より先にまずレインの名前を聞いてきた。