花壇は円状に伸びており、中央には大きな噴水があった。ところどころに影を作るように薔薇のアーチが点在していて、遠目には庭を眺めるように東屋が立っていた。

 ガラス製だろうか、透明な温室もあり、この庭の半分だけでタンベット男爵家の屋敷がすっぽり収まってしまう広い庭は、それに見合うだけの手がかけられていることがわかった。

「レイン、レインは何の花が好き? 母が亡くなってから、この庭は庭師に任せきりでね。よければ、レインの好きな花を植えてくれると嬉しい」
「えっ……!? こ、こんな素敵な庭に手なんか加えられません! 庭師の方はすごいです……!まるで夢みたいなお庭……」
「ふふ、それは庭師のダンに言ったら喜ぶだろうね。でも、これからこの庭の主人は君だ、レイン。レインはどんな花が好き?」

 もう一度聞かれて、レインは眉尻を下げて考え込んだ。
 好きな花はあるけれど、好きな理由が理由だし、そう胸を張って言えるほど花には詳しくない。