「王家の……暁の虹……!」

 家令は驚き、アンダーサン公爵が頷いた。
それに家令は涙ぐんで、何度も、何度も首肯している。

「姫君は、本当に、まことの姫君でいらしたのですね……」
「大切にしてあげてほしい。ユリウスのいとこであり、先代女王の唯一の姫君であるイリスレイン王女の存在を、まだ公開することはできない。タンベット男爵は実行犯だが、それを操っていたものがいるはずなのだからね……」

 そこで、アンダーサン公爵はユリウスに向き直った。

「わかったな?だから、彼女を必ず守るんだ」
「当然です――命に代えても」

 ユリウスは静かに頭を下げた。言われずとも、レインは必ず守る。ユリウスの愛する、何より大切な存在なのだから。

「そろそろ行きます。レインの勉強が終わる時間なので」
「ああ、行ってきなさい」

 アンダーサン公爵が執務へ戻る。すれ違った家令に見送られ、ユリウスはこの頃レインが見せてくれるようになった、ほのかな、はにかむような笑みを思い出し、ゆるりとまなざしを緩めたのだった。