アンダーサン公爵が、やわらかな手つきでレインの前髪を撫でる。
 そのとき不意に、レインの赤い目が見えてしまったのだろう。驚愕のまなざしでレインを見つめるアンダーサン公爵に、レインはあわてて顔を隠し、うつむいた。

 きみの悪い目を見せてしまったことが、ひたすらに申し訳なかった。

「これは……暁の虹……?」

 アンダーサン公爵がなにか呟く。その言葉の意味はわからなかったけれど、ユリウスは違うようで、アンダーサン公爵の言葉に首肯した。

「父上には、僕の言いたいことがわかると思います」
「ああ……そうだね。これは……大事件だぞ……」

 アンダーサン公爵が、タンべット男爵に向き直る。そうして、硬い声で、口を開いた。