「僕がその公爵子息だ。ありがとう、たくらみを教えてくれて。でも、それより優先することは、君の手当てだ」
「え……?」
驚きに目を見開くレインを抱えて横抱きにし、少年は傘を脇に挟んで力強く歩きだした。ぽつ、ぽつ、とまた雨が降り始める。
けれど、温かな腕が、レインをその冷たさから守ってくれた。レインが混乱して何もいえないでいると、安心させるような笑みが降ってくる。暗いなかでもその笑顔の気配はよくわかった。
どこか懐かしい、慕わしい気配だわ。レインはそう思った。
その時、遠くからぱしゃぱしゃと走ってくる存在があって、その乱暴な足音から、レインは思いだした恐怖に身を震わせた。この足音は……。
「ユリウス様!こんな雨の中、どこへ行かれていたのですか?」
「ユリウス様、パトリシアも心配しておりました……ん?その腕の中の、もの、は……」



