元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

 ぎゅっと握られた腕が少し痛い。レインが顔をしかめると、少年ははっと気づいたように、まじまじとレインの顔を見つめた。

「ここも、ここも……なんてひどい傷だ……。熱まであるじゃないか、おいで、君。ここにいたら死んでしまう」
「ご主人様のお言いつけです。私はここから出てはいけないんです。本当は、少し出てしまっているから、もうだめなんですけど……」
「そんなことを言っている場合じゃないだろう……!?」
「それに、公爵閣下とそのご子息に、お嬢様がしようとしていることをお伝えしなければならないのです、お嬢様が公爵閣下のご子息になにかして、無理矢理婚約なさろうとしています、と」
「なんだって?パトリシア嬢、なにか企んでいるとは思っていたが、そんなことを考えていたなんて」
「ですから、離してください。今なら私が罰せられるだけで……」
「その必要はない」

 レインの言葉に、少年はきっぱりと言った。