「それが、あなたの『ほんとう』なのね」
「……あ?」
「最初に出会ったあなたは、もう少し、貴公子だったわ」
「ああ、貴公子、貴公子ねェ……。こうすればいいかい?」

 オリバーは髪をかき上げてにっこりと笑って見せた。それはあの入学式の日の彼のようで、ああ、やはり取り繕っていたのだと思った。それが悪いわけではない。けれど、そうしてだれかを騙そうとしていたのだと、失望にも似た気持ちだった。

「そうしないと、君たちは認めないだろう? あの凡庸な王の息子だと……無才の王子だと陰であざ笑って!」

 オリバーはそばにぼうっと突っ立っている使用人を突飛ばした。レインを囲むうちの一人は、何の反応も示さずその場に倒れ込む。

「こいつらも役に立たないな。薬で正気を失わせてるって話だったが……ただ静かなだけじゃないか」

 言って、オリバーはもう一人の使用人も蹴り飛ばし、足蹴にした。それでも何も表情も変えない使用人を、つまらなそうに見る。

 レインは倒れ込む使用人の胸を確認した。大丈夫、生きている、上下している。