レインは前髪の中に隠れてしまった目をぱちぱちと瞬いて、少年の、レインより頭二つ分大きい背を見上げた。
その時だった。一瞬だけ、さあっと雨が途切れた。雲が風に吹かれて、その位置をずらしたのだ。わずかに訪れた湿った晴れ間の中、ぽっかりとした月明かりがレインと、少年の姿を照らした。
少年は、美しかった。まるで遠目に一度だけ見たことのあるガラス細工の人形のようだった。
紺碧の髪に、炯々と輝く青い瞳。眼鏡越しのまなざしは透き通って、驚いたようにレインを見つめている。
すっと通った鼻梁に、はっきりとした目鼻立ち。こんなに美しいひとが存在するのか、と思うほどきれいな少年だった。彼は、見惚れているレインの両肩をがしりと掴んで、小さく「レイン……?」とつぶやいた。
どうして、少年がレインの名前を知っているのだろう。
レインをレインと呼ぶのはレインだけだ。もう失って久しい、奴隷になる前の記憶の中、自分がそう呼ばれていた気がして、レインは自分をレインと呼称していた。
「私は名無し、です。お客様」
「名無し!?タンベット男爵は君を名無しだと……」
「はい」



