半狂乱になってわめくヘンリエッタを、誰も助けない。使用人も、ぼんやりと突っ立っているだけだ。

「いや、いやぁ……! 私はヘンリエッタなの! ヒロインなの! そうじゃないと、そうじゃないと……!」

 レインはヘンリエッタに手を伸ばした。アレンを抱いているのとは逆の手でヘンリエッタを抱きしめる。
 おねえたま、と言って、アレンがレインを案じるように声をあげるから、それには大丈夫、と返す。

 我を失ったヘンリエッタが暴れて、レインの腕を、首を、爪でひっかくけれど、レインは彼女を離さなかった。

「いやあ、いや……!」
「……助けるわ、あなたも、あなたの、本当のお母様も」
「無理よ! お義母様はいつだっておかあさんを殺せるの! そうやっていつも笑って……だから、できるわけない!」

「……それでも――助けるわ。必ず」