「わしのせいだ……わしが、おひいさまの部屋に張り付いておれば……」
「女王になるまではレインのプライベートを尊重しよう、と言ったのは私だ。ダンゼント騎士団長が気に病むことではない」

 ユリウスは、そこまで言って、はっととあることに気づいた。

「……どうして、レインの部屋にも、中庭にも、争ったような跡がないんだ?」

 ユリウスのこめかみを汗が伝う。レインを早く取り戻し、安心させてやりたいと、焦りばかりが先行する。

「閣下!」

 その時、他の王族の居住区にレインがいる可能性を考えて確認をしてきたチコが戻ってきた。その顔は暗く、震えた声でチコは言う。

「アレン様もいないのです……!」
「な……」
「そして、投獄されていたコックス子爵令嬢と、北の塔にいるはずのオリバー第一王子の姿も……看守は殺されていて……ひ……ッ」
「ユーリ、落ち着け、おやじも」