元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される


 それが苦しかった。
 それから、お嬢様はレインが気を失うまでそこにいたように思う。

 気が付けばお嬢様の気配は消えていて、レインがはっと目を覚ましたのは、あたりがすっかり薄暗くなったころだった。

 傷の痛みと熱でのどがカラカラに乾いていたから、レインはそっと体を起こした。
 遠くの館から漏れ聞こえる音楽と、見える明かりにまぶしく目を細め、レインは少しだけ、とこっそり干し草小屋を出た。

 どうにかして、公爵親子にパトリシアお嬢様のたくらみを知らさねばならない、と思った。
 だって、お嬢様がどんなことをするかわからないけれど、好きでもない相手と結婚するなんてかわいそうだ。どうせ、レインが罰を受けるだけなのだから、大丈夫。
 干し草小屋の外には、ざあざあと雨が降っていた。