「今日は王都から公爵様が来るの。そのご子息もね。私は辺境領主の娘だけど、わざわざ私たちの領に来るのだもの。うまくやれば、私と結婚してくださる可能性もゼロではないのよ」
そう言うお嬢様の目には、なにかたくらみのようなものが見えた。レインは心がざわつく心地がして、それをどうにか止めねば、と思った。けれど、できなかった。レインの心に、お嬢様への恐怖がじわりと染みついていたからだ。
お嬢様は自身が公爵のご子息を陥れ、公爵のご子息の意に沿わぬプロポーズを受けるのを想像したのか、その場で嬉しそうにくるりと回った。
そうして、今も地べたに這いつくばったままのレインを見てにやりと笑う。
「ま、あんたには関係ないけれど」
レインは倒れ伏したまま、じくじくと痛む傷を抱えてぼんやりとお嬢様を見上げた。
(どうして私はこんなに、この人たちから嫌われているんだろう)



