元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される


「ワァ……きれいネェ」
「アレン殿下!」

 ベルが声の主のもとに駆け寄る。

「まあ、女性の着替えの場に来てはいけませんよ」
「アレン殿下?」

 レインが振り返ると、扉の隣をよちよちと歩きながら、幼い金髪の子供がこちらを見上げて目を丸くしているのが見えた。

「すみません、姫様。さ、アレン殿下、お部屋にお戻りになりましょうね」
「ヤ、なの!」
「いいわ、ベル、チコ」

 レインはそっとアレンと呼ばれた子供の前にしゃがみ込んだ。そうすると、アレンの琥珀色の目がきらきらと輝いて、その口はもう一度「きれいネェ」と繰り返した。

 ――アレン・グレイウォード。オリバーの弟王子。まだ幼く、それゆえにレインとは会ったことがなかった。邪気のない、無垢な顔でレインを見上げるアレンはかわいらしい。不仲というわけではないだろうが、オリバーはアレンのことをほとんど口にしなかった。