レインはのろのろと顔をあげ、そして地面に顔をこすりつけた。
その上から足を乗せられ、レインの口に土が入る。じゃり、と口の中に広がった、苦みに近い味。それにレインはえずきそうになった。
レインの頭を足蹴にして満足したらしく、領主はレインにもう一度「役立たず!」と吐き捨てて干し草小屋から出て行った。
ぐしゃ、と崩れ落ちるように横たわったレインの頭に、きゃらきゃらとした甲高い笑い声が降ってくる。パトリシア――お嬢様だ。
「無様ねえ、名無し。ない人形を探して体調を崩すなんて、かわいそう」
お嬢様の白い手袋をした手が、レインの前髪を掴んで持ち上げる。
痛みに思わずしかめられたレインの顔をひとつ張って、お嬢様は表情を消した。
「死んじゃえばよかったのよ、あんたなんか」
ぱん。ぱん。とお嬢様がレインの頬を平手でたたく。
「血の色みたいな汚い目の色。忌々しいわ」
レインは、殴られすぎてすっかり腫れた目元に爪を立てられ、ぐう、と呻いた。
しばらくレインの苦しむ顔を見ていたお嬢様は、レインの髪を放り捨てるように振り払ってにっこりとほほ笑んだ。
「でも今日は許してあげる。私は優しいもの」
お嬢様の傘がレインの隣に突き立てられる。



