元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

「覚悟……ですか?」
「ええ」

 レインは背筋を伸ばした。

「あなたたちに大切にしてもらう、それに見合う努力をする覚悟よ」

 そう言ってレインは微笑んだ。
 使用人たちがそんなレインを見つめてほう、とため息をつく。
 ユリウスがそんなレインを見て目を細め、では、と口を開く。

「私は少し陛下と父上と話してくる。何かあったら飛んでくるから、すぐに呼ぶんだよ」
「ユリウス様ったら、私はそんなに子供ではありませんわ」

 くすくす笑えば、ユリウスもそのまなざしを優しく緩める。
 じゃあ、行ってくるね、とユリウスが踵を返す。その背が見えなくなったころ、不意に声を掛けられて、レインは振り返った。

「愛されておいでですね、姫様」
「ありがとう。ええと……チコ?」
「はい、チコです、姫様」
「ごめんなさい、幼いころの記憶がないの」

 しゅんとうなだれるレインに、チコは笑った。

「三歳のころの記憶ですから、忘れているのも仕方のないことです。ましてや、恐ろしい事件があったころのことですもの。むしろ、忘れてしまってもいいのです。ここにいるものは、みーんな承知しておりますからね」