元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される


 見知った顔があってほっとすると同時に、驚いてしまって、レインは目をぱちぱちと瞬いた。

 ――くう!うらやましい!ダンゼントさん!
 ――私も姫様にばあやと言われたい……!
 ――ダンゼントさんばかりずるい……!

 そこかしこから聞こえるひそやかな声は、ダンゼントへの嫉妬がにじんでいる。

(嫉妬? 私に呼ばれたダンじいやに?)

 そう思って振り返った先、見渡す限りの使用人たちは、みんな一様にレインのことをあたたかな目で見つめている。
 ここのあたたかさはそう、まるでアンダーサン公爵邸のようだ。

 よそから来た元奴隷の王女、ということで、そう言った目で見られることも覚悟していたレインは、しかし今、ああ、と思った。

 奴隷だったころのトラウマで、私が外の世界を見ようとしなかっただけで、世界はこんなにも優しいんだわ、と。
 レインは、この優しい人たちの期待にこたえたい、と、その時初めて強く思った。
 女王になりたい、という思いとは少し違う。けれど、この人たちを、この笑顔が崩されぬことがないよう守りたい、と思った。