脚を踏み入れた王城の中は、知らない場所なのにどこか懐かしさを感じる、そんな不思議な場所だった。
この国の豊かさを示すような豪奢な家具は、レインの目には少しきらびやかが過ぎた。
ユリウスがどれだけレインのことを考えて部屋を整えてくれたのかがわかって、と同時に、こんな時でもユリウスのことばかり考えている自分に苦笑した。
隣についてくれているユリウスが「どうしたんだい、レイン」と尋ねてくれる。
そこにユリウスの優しい心と気遣いを感じて、レインは微笑んだ。
――大丈夫、怖がることなんてない。だって、ユリウスがいてくれるのだから。
長い回廊を通って、城の西側にたどり着く。
生前の先代女王――レインの母が使っていたという内殿だ。それをレインのものにしてくれるという国王には感謝してもしきれなかった。
そうして、内殿にレインが一歩、足を踏み入れた瞬間だった。
「――おかえりなさいませ! 姫様!」
何十人もの声が揃って聞こえ、レインの鼓膜を震わせる。
思わずユリウスの後ろに隠れそうになるのをこらえて目を瞬くと、大勢の使用人が内殿の入り口に整列しているのが見えた。
挨拶が終わったからだろうか。その使用人たちの中から何人かが進み出てくる。



