顔を隠す眼鏡と、長い前髪を許してくれた。ユリウスも、何も言わなかった。
 体調不良でエスコートできなくなったらしいオリバーの代わりに、レインのエスコートを引き受けてくださったユリウスはとても美しかった。

 レインが目の覚めるような深い青色のドレスを着ているのに対し、ユリウスは胸ポケットのスカーフをレインの髪色と同じ、薄青色にしてくれた。サファイアのイヤリングを見て、微笑んでくれる。
 それがどれほど嬉しかったのか、きっとユリウスには想像もできないだろう。

 そして、思ってもいないのだ。レインが、あさましくも罪深い想いを、ユリウスに抱いているだなんて。
 このパーティーが終わったら、レインはユリウスの手を離れ、オリバーに嫁ぐ。
 その時が、永遠に来なければいいのに、と思った。

 ――そんな決意をしたのに。