「……ここで罰すれば、私は主に噛みついてまで主の本心を引き出そうとした忠義に厚い従僕を失うことになるな」
「……」
「すまなかったな。ベン。お前のおかげで、最初の決意を思い出せたよ」

 こぼすように言ったユリウスに、ベンジャミンが顔をあげる。

「……何言ってんだよ。ユーリ。親友だろ。……友人のために全力を尽くせるってのが、親友って関係だ」

 ま、ちょっと痛かったけどな。そう言ってベンジャミンはにかっと笑った。

 それを見て、ユリウスもふ、と握りしめていたペンを離す。

「お前が親友でよかった。……ベン、今から王城へ行く」
「何のためにか聞いても?」
「無論、レインの婚約を破棄するためだ」

 ユリウスは口元に薄く笑みを浮かべた。ベンジャミンが頷き、馬車の準備をするために駆けていく。
 考えるのは得意だ。口先も、そのための土台も、レインのために研ぎ澄ませた。――だからもはや、迷いなどありはしなかった。