君のとなりは妹の指定席

「じゃあ、次、右上の3」

 バシッ!

「次は、左下の7」

 バシッ!


 ふわぁ~、すごい……。


 3×3の9つの的を、的確に射抜いていく。

 いわゆるストラックアウトっていうヤツだ。


「少しくらい奈々にいいとこ見せとかないとな」

 なんていってはじめたんだけど、カッコいいなんてもんじゃないよ。

 やっぱりコータは、野球をやってるときが、一番輝いて見える。


「おお、すげーな」

「あれっ。あの子、見たことない?」

「うわっ。夏の県大会準優勝校のエースじゃん」


 しばらくすると、周囲にちょっとした人だかりができてしまった。


 緊張して、外さなきゃいいけど……って、あたしの方が緊張してきちゃったよ。


「最後。どまんなか、いっきまーす」

 気の抜けた宣言とは裏腹に、まるでそこにバッターがいるかのようなピリッとした空気を纏うコータ。


 ドキドキドキドキ……。


 大きく振りかぶると、ゆっくりとしたモーションで、その日一番の球を的に向かって投げた。

 バシンッ!!

「「「おぉ~」」」

 いい音を響かせて、真ん中の的を射抜いた瞬間、どよめきが沸き起こる。


「へへっ。どうだ、見たか、奈々」

 やんちゃな子どもっぽい笑みを浮かべたコータが、あたしの方を振り向く。

 とくんっ。

 そんなコータに、あたしの体は素直に反応する。


 うん。ちゃんと見てた。

 カッコよかったよ、コータ。

 コータは、やっぱり野球が一番好きなんだよね。

 だったら、なおさら……笑顔で送り出してあげなくちゃだよね。


 思わずこぼれそうになった涙を、あたしは必死に堪えた。