君のとなりは妹の指定席

「ったく。慌てんなって。ほら、ちょっと待ってろ」

 ふっと笑ってから先に立ち上がると、コータが「ほらっ」と座り込んだままのあたしに向かって片手を差し出した。

「う、うん……」

 コータの方に手を伸ばしかけ——途中でぴたりと止まる。


 ……いやいや、コータと手をつなぐなんて何年振りだろう、なんて思わず考えちゃう自分の方が恥ずかしいってば!

 どうせコータはなんにも考えていないんだから。


「ありがと、コータ」

「お、おう」

 コータに引っ張りあげてもらい、精いっぱいの笑顔を向けると、コータが一瞬視線をさまよわせた。

「てか、奈々って、こんなに運動音痴だったか?」

「うるさいっ。コータと違って、必死に受験勉強してたから、運動不足なのっ」

 あたしが口を尖らせて見せると、コータが楽しそうにははっと笑う。

「それでは姫。わたくしがエスコートして差し上げましょう」

 コータが胸に手を当て、気取って見せる。

「では、おねがいしようかしら」

 そして二人で顔を見合わせ、ぷはっと同時に吹き出した。

「姫って柄じゃねーだろ」

「失礼な! コータが先に言ったんでしょ!?」

 グーでコータの胸を叩こうとして、またバランスを崩しかけ、コータにぱしっと腕をつかまえられた。

「ったく。そうやってふざけてると、また転ぶぞ」

「そ、そうだね。とりあえず、ここ出よっか」