ソフィーがイーダの背中を叩いた。

「だからこっちの心配は要らない。貴方は魔王様としあわせになりなさい」

 ここまで言ってもらって、イーダはようやく決心がついた。

「じゃあ、本当に今すぐ魔王様に呼びかけるよ?」

「ええ、みんなには言っておくわ。それにあの魔王様なら、今生の別れってわけでもないんでしょう?」

「うん。たぶんお願いすればいくらでも……」

(むしろ魔王様のほうが、すぐにでも遊びに来たがりそう!)

「私に用があるときはラーシュさん……ラーシュに言付けてくれれば、すぐに私に伝えてくれると思う」

「わかった。体だけ気をつけて」

「ありがとう。行ってきます!」

 そうしてイーダは魔法を唱え始めた。

「魔王様、私です……魔王様、」

 たったそれだけだった。

 それだけでイーダは魔界へ行ってしまった。

「魔王様ったらイーダにベタ惚れじゃないの」

 ソフィーはクスクス笑った。