強烈に違和感を覚えた。

(そういえば、王女の部屋を見学に行ったときも、機嫌は悪かったですが健康状態はよさそうだった気が……それなら第一王女が臥せっているという情報は一体……?)

 あるいは自分の勘違いで、彼女は第一王女ではないのかもしれない。

 推察しようにも情報が足りない。

 今必要なのは情報収集だ。

 ラーシュは部屋の会話に耳をそばだてることにした。

「だから気が変わったの! 魔王様は不気味どころか、見たこともないくらい美しいし!」

「そんな……お前が『魔王なんかに嫁ぎたくない』と泣いて懇願するから、身代わりを立てたというのに……」

(な、な、何と呆れた……)

 漏れ聞こえてきたのは、とんでもない内容だった。

 ラーシュは会話をしっかり聞き取るために、音を立てないよう警戒しながら、枝の先へと移動した。