「期待してるところ悪いけど、まだ婚姻の儀も済んでないのに、そういうことをするつもりはないからね」

「き、期待なんてっ」

 魔王は『はははっ』と大笑いした。

 イーダも『もう!』と怒ってみせたものの、すぐに『ふふふっ』と笑ってしまった。

「大きいベッドだから、ふたつに割ろう」

 そう言うと、魔王は巨大な刃で割ったみたいにベッドを真っ二つにしてしまった。

 イーダは『ひいっ』と小さく悲鳴を上げた。

「何てことを……」

「朝になったら、元に戻すから平気だよ」

 魔王は何でもないことのようにそう言うと、ベッドの間に距離を取った。

「魔王様の魔法は規格外すぎて、今日は驚きの連続です……」

「僕と結婚したら、魔法で叶うことは何でも僕にお願いしてくれていいからね」

 魔王が優しく未来の話をするから、イーダは泣いてしまいたかった。