イーダが後ろ手でドアを閉めると、保管庫の中はたちまち薄暗くなった。

 それでも慣れているからか、イーダはズカズカと入っていく。

「ええっと、確かこの辺に……あった、あった!」

 イーダは中央に近い棚の最上段を見上げていた。

 魔王が、イーダに触れるか触れないかの距離まで近づいた。

「手が届かないだろ? 僕が取るよ」

「私魔女なんで、これくらいは取れますよ」

 イーダは呪文を呟き、薬草の入った瓶を浮かせて手元に引き寄せると、『ふふん』と得意気に魔王を見上げた。

「残念、いいとこ見せたかったのにな」

 魔王様が大げさに肩をすくめた。

「ところで、その瓶の中身よく見せて?」

「いいですよ。はい」

 上半身を捩じって魔法に瓶を手渡した。

 そのとき魔王と視線が交わった。

 その瞳に捕らえられて、イーダの心臓は大きく跳ねた。