「姉さんたち、いい加減にして! それより大魔女は?」

「薬作ってる。貴方が連れ去られてからは、抗議の意味もあって無茶な量を作るのはやめたんだけどね。それでも、やっぱり苦しんでる王都の人たちのことは放っておけないじゃない? だから、普通に働いて作れる分だけは作り続けてるのよ」

「だったら、ちょうどいい。魔王様、魔女が作ってる薬を確認してもらえますか?」

 イーダの『魔王』という言葉に、また場が凍り付いた。

「やだっ、私さっき変なこと言っちゃった……」

 しかし魔王は笑顔で返した。

「いやー、『美丈夫』って褒め言葉ですよね? うれしかったですよ」

 姉さんたち……どころか、ばばたちも含めて、魔女は一網打尽で心を奪われてしまった。

「きゃー、いい男!」

「魔王様って、笑顔が素敵じゃないの」

 イーダは魔王の腕を引っ張った。

「こっちです。一緒に来てください!」

 イーダの真っ赤な怒り顔に、魔王は笑いが止まらない様子だった。