魔女の集落はもちろん魔女しか住んでいないとはいえ、普段から町にも出かける。

 町娘と変らない服装をして歩いていると、器量のいいイーダはナンパされる機会も多い。

 イーダが魔女だと知っていて、それでもなお口説いてくる者だっている。魔女は修道女ではないから、恋愛するもしないも自由だから、別におかしな話でもない。

 これまでに、一般の人と結婚して集落を出ていった先輩魔女だって何人もいる。

 にも拘らず、イーダは交際経験が皆無だった。

 決して男の人を毛嫌いしているつもりも、避けているつもりもない。

 デート中に見つめ合っているカップルを見かければ、微笑ましいなとも思う。

 ただ、あんなふうに唯一の誰かを見つめる自分を想像できなかった。

(きっと私に恋愛は関係ないってことなんだ)

 そう納得していたし、生涯魔女の集落で暮らすことを疑ったこともなかった。