そもそも魔女の集落を王室の直轄領ではなくノールブルク領に置いているのだって、王家が魔女を抱え込んでいることを隠すためだ。

 王家からの依頼も、ノールブルク領主経由でしか来た試しがない。

 となれば当然、怪しい魔女が王宮に侵入するようなことがあってはならない。

 ところがだ。

 斑紋死病の感染を地方に広めないために、王都からの人の出入りを制限することが決まった。

 その結果、胡散臭いはずの魔女が堂々と王宮の敷地内に入り、指定されている最上階のバルコニーまで薬を届ける羽目になってしまった。

 『上空を移動し、上空から薬を下ろすだけなら感染しないだろう』と。

(気楽に言ってくれる)

 ソフィーはこのことを苦々しく思っている。

 魔女にその権利を“与えてやった”ぐらいのつもりなのかもしれない。